取引先の会社が訪問してきた際、手土産にお菓子を持ってきてくれることがある。わたしが来客の対応をするわけではないので、直接お菓子を手渡されるわけではない。
が、これも悪しき習慣と言うべきか、来客の対応を終えた男性社員は取引先からもらったと思われるお菓子の入った紙袋を当たり前のようにこちらへ渡してくる。つまり、もらったから配っておいて、ということだ。
お前がやれよ、と次こそは言ってやろうと、いやさすがにどストレートにやれよと口にするつもりはないが、何かしらの言葉を選んで言ってやろうとは思うものの、素直に紙袋を受け取る。
これは社内の問題なのでどこかしらで変革が起こるかもしれないが、それ以上にどうしようもないのはお菓子の中身だ。
しわしわになった紙袋から綺麗に包装された箱を取り出し、包装紙に内容物が書いてあるか確認する。これは中の箱に書いてあるタイプか。包装紙を手でびりびりと開ける。
頼むから同じものがある程度の個数の入った個包装のものであってくれと願って箱を裏返す。食品表示の内容量を真っ先に見る。勘弁してくれ。
箱を開けて馬鹿じゃないのか、と思わず小さな声が漏れてしまった。個包装のなかなかの大きさのパウンドケーキ数個、個包装の小さなクッキーが数個、さらに小さなクッキー数個が一つの透明な袋にまとめて入っているもの。またさらに違う種類のクッキーがまとめて入れられた透明の袋のアソート。
数だけで考えれば部署の全員に配ることはできるが、大きさも種類も違う物を配るのは神経を使う。
配りにくいお菓子を持ってくる会社が大嫌いだ。同じ大きさの同じものが多めに入っている物を持ってこいよと。
一番困るのは最近人気のクッキー缶。個包装ではなく、小さな缶にぎちぎちに詰め込まれたクッキー。どうやってわけろと。仕方がないのでクッキーを引っ掛けて取り出すための割り箸とティッシュの箱とクッキー缶を持ってデスクをうろうろする。
買ったお土産のお菓子が誰の手によってどう配られるのか、そこまでの想像ができないなら手ぶらで来い。