朝の満員電車でぎゅうぎゅうと押し込まれながら、スマホのアプリで新聞記事を流し読みしていた。すると、文章の中に読み方のわからない単語が出てきて先に進むことができなくなった。
その新聞の中にぽつんと現れた熟語の文字ひとつずつの意味も読み方もわからなかったので、単語をコピーして検索をかける。画面が切り替わり、いろんな辞書がその言葉の意味を表示してくれる。
検索のトップに出てきた結果を開こうとタップをしたとき、自分の降りる駅に着いてしまいスマホをバッグに押し込み電車を降りた。文字を目に焼き付ける間も無く、そのまま時間が過ぎてしまった。
帰宅して、そういえばあの単語はなんだったかと思い出そうとしても思い出せない。スマホを開いても検索の画面は残っていない。履歴も癖でどこかのタイミングで消してしまったらしい。漢字ひとつすら思い出せず、ぼやけた輪郭を頼りにそれらしい意味で検索をかける。やっとの思いで見つけたその言葉を残しておかねばと、画面を保存して、手近なノートににも書き残す。
知らない言葉が知ってる言葉になるこの妙な感覚は、大人になったこのお年頃だからそこの醍醐味のようにも思える。